アンビバレンス
私の中には多分、大きな背反が相克しながら住んでいる。平手友梨奈がふらふらと終わりのない小径の壁にぶつかったり倒れたりするように、今までにない大きな力が要る作業に取り掛かっている。
自分の現実と夢の背反、他人への感情の背反、外向性と内向性の背反。沢山の矛盾が衝突し、降伏し、また生産され、私は自分が大きな精神的な節目にあることを知る。
大人と子供の間、男性と女性の間、理系と文系の間、古典とモダンの間、純文と大衆の間。
様々な選択肢が耳を澄まし、闇の中でわたしの理路脈略を監視し、矯正しては破壊する。
「破壊的創造の時間ですよ、少年」
心の中の大人がそう言う。
でも私はもう少年ではない。ホールデン・コールフィールドのように迷える年でも環境にもいない。やるべき事は現実において行かれないように夢を再構築、置き換え、時によっては破壊することであり、感情を論理で仮止めすることであり、笑顔を武装して中身を少しでも隠すことである。
アイデンティティを考てる時間などない、未来は特急電車のように自分を通り抜けて過去と混ざり合う。発芽の時期に間に合わなかった種は二度と芽を出せなくなるし、最終電車に乗り遅れたら家まで歩いて帰るしかない。
「そうだろうか?」
心の中の少年が問いかける。
私はこの先も大人の振りをして生きていくかもしれない。でも今のままではいられない。ライ麦畑に住むことはできない。ここは崖から落ちてでも挑まなくてはならないポイントなのだ。じゃないと私は21歳の時間に閉じ込められてしまう。現実だけが進み、夢はひたすら深みを増し、自分が両方のズレに圧迫されてしまう。
「力業でどうにかできる問題ならいいんだけどね」
そして私は深い深い眠りについた。自分の夢を訪ねるように。
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