文鳥とピアノ

少しだけお付き合いください

夢Ⅱ

日ごろ自分が考えていることの答えは、偶に夢となって出てくる。

いいや、もしかしたら答えという程のものじゃないかもしれない。何気ない手がかりとか、小さなヒントのようなものだ。

電車に揺られうたた寝したり、本を片手に意識が朦朧とした時、尋常の道路を歩いてると我知らずに道端に逸れて、眠りという浅い池の中へゆっくり入り込んでいく、そのような気持ちである。

夢の中で誰かが繰り返し何か大事なセリフを言ってたり、宇宙のような無の暗闇の中で自分が何かを呟いてたり、私はとにかくそれらのことを覚えられるように繰り返し何度も、夢の中の主人公に言わせるのだ。

不思議なことに夢から覚めると、池から出たばかりだと裾は辛うじて濡れているものの、瞬く間に記憶はすべて水のように蒸発してしまう。池にある砂金を何度も掴もうとするものの、両手に残った微かなものさえ水とともに指の隙間を通って跡形もなく消えてしまった。さらにくみ取ろうとするも空振りするばかりで気づいたらいつもの道路の上を歩いていた。

そしてまたいつか、会える日まで。