生々流転

少しだけお付き合いください

青年アスペ2

一人の青年がビルに入っていった。青年は黒いスーツを着ており、鋭い三白眼に、伸びた前髪は眉毛にかかるくらい。顔立ちと相まってスーツは喪服にも見える。青年は入り口で待機している受付と思しき女性と暫く会話した後、ビルの奥へと速足で歩いて行った。 …

働くことについて

ショッピングモールで買い物してたら、いつの間にかサービスカウンターでポイントカードを作ることになった。 ポイントカードは概して嫌いだ。カード自体溜まりに溜まって置く場所にも困るのに、肝心のポイントは雀の涙だったりする。極力ポイントカードは作…

青年アスペ

やあ、元気かい。お久しぶり。 そういえばさ、俺はアスペ診断がほしいって何度も思ったことがあるんだ。 アスペルガー症候群ってのは、簡単に言えば知的障害のない自閉症。症状はピンキリだし、診断結果は数値化できない定性評価だから曖昧な事もある、しか…

迷う時間すら与えてくれないのか

生まれてからひたすら忙しくて自分のために生きられた気がしない。幼稚園のあとは小学校、 そのあとは中学校、高校、大学、一息ついて 就活、就職、転職、そのあとは 婚活、結婚、育児、付きまとうものは 仕事の心配、老後の心配、健康の心配、 人生の悩みっ…

夢千夜

夢日記というものを小さい頃は付けていたものの、日記という作業の煩わしさや毎年増えていく日記帳の管理、毎朝砂金を振るう作業のように寝ぼけながら断片的な夢を辛うじて文字に起こす苦行に耐えられなかった。 それでもやはり夢から逃れることはできない。…

現実逃避について

現実逃避があるのなら、理想からの逃避もきっとありますよね。 小さい頃の夢を諦めたり、結婚や仕事で色んな事を妥協したり、辛いことに耐えるのも現実を受け入れているように見えるけれどもそれは理想を諦めたことにもなりますよね。 現実を受け入れなけれ…

夢と現実の境目は

明晰夢をよく見ていた。最近はあまりないが、そういえば学生時代に夢の中で夢だと気付くことは多かった。夢の中で飛ぶことは非常に面白かった。夢の中では、自分は何でもできるのだ。飛べると思えば飛ぶことだってできる。大事なのはイメージすること、想像…

七つの子

「かーらーすー、なぜなくのー」と女の子は大きい声で歌っていた。彼女の隣には母親がいて、二人は公園の林道を歩いている。平日の公園はかなり空いていて、少女の歌声は木々の間で微かに木霊した。道の向かい側で通りかかる人は少なからず興味を持って、彼…

守るべきもの

19歳、私は上京して、小さめのアパートに住むことになった。初めてその場所を訪れたとき、私は都会から少し離れた、あんまり辺鄙ではなく、かといって賑やか過ぎないその町のことが気に入った。通りかかる通行人の少し呑気な顔や、街角でうろつく大儀そうな…

迷いとか決断とか

自分は一人ベルトコンベアの上に居る。 いつからそうしているか覚えていない、誰かに言われているのかもしれないし好きで乗ったのかもしれない。とにかくベルトコンベアから下りることができない。できないと言うよりめんどくさいのだ。下りたら完全に行くべ…

変わらないものについて

中学校の同級生の話。 多くの田舎の中学校と変わらず、私が通っていた所も随分閉塞した環境であった。一学年には四つのクラスがあり、一クラス30人と言ったところだ。往々にして小学校で馴染みが出来上がってた連中ばかりで、外地から引っ越してきた子や少数…

アンビバレンス

私の中には多分、大きな背反が相克しながら住んでいる。平手友梨奈がふらふらと終わりのない小径の壁にぶつかったり倒れたりするように、今までにない大きな力が要る作業に取り掛かっている。 自分の現実と夢の背反、他人への感情の背反、外向性と内向性の背…

僕が何かを目指すわけ

勉強はあんまり得意な方ではありませんでした。学校の勉強は実に面白く興味をそそられましたが、英語と国語を除いて、勉強せずともいい成績を取れたものはありません。いつも通り授業を受けるだけでは、物理や数学はそんなに分かったものではありませんでし…

やさしい歌が好きで

彼はこちらへ見向きもせずに、鍋の中のおでんをつついて、ちくわを口に運び頬張っていた。呑気そうな瞼と裏腹に、彼がつい先程こぼした言葉に私は戸惑いを隠せなかった。 「卒業したら地元に帰るってどういうこと?東京で仕事を探すんじゃなかったの?」 自…

気が狂いそう

これから自己紹介をしたいんだけど、ほんとは自分のことよくわかんないんだよね。 クラスじゃ不思議ちゃんだといわれているけど、ふつーにしてるだけなんだよね。 ふつーに学校来て息してるだけで、不思議ちゃんだってよばれて、いじられてんの。ほんとうに…

敏感肌

私は今ベッドの上に仰向けになっている。頭の下にはザラザラした髪の感触とひんやりした枕カバーと頭の重みのせいで凹んだ枕。 布団が体の上に被さっている。空気を含んだ厚い羽根布団だ。さらに布団の上には、脱いだジャージとズボンの重みが微かに感じられ…

手をはなそう

男は冬があんまり好きじゃない。 枯葉の匂い、透きとおる風、空と木のコントラストの全てがほかの季節と同じくらい趣深いけれど、なんとなく訳のない気だるさに見舞われることが多かった。朝起きると鈍い光がカーテンの隙間から漏れ出て、重い布団が体に負い…

手をつなごう

大学はそんなに嫌いではない。 一年生の頃は好奇心旺盛で色んな授業を取っていたし、二年生には単位のほとんどすべてを取り終え、今や残るは卒論のみ。講義に対して興味が尽きることはなく、良き理解者でもある友達に恵まれ、金銭には困らない。 だが私は、…

左脳の傲慢

全知の存在がいるとしたら、きっと人間のすべてのややこしい感情に論理的な説明をつけることができただろう。何かを嫌だと思う気持ち、好きだと思う気持ち、なんとなく死にたいと思うとき、生きなければと奮起するとき。しかしそれを、全ての感情を筋の通っ…

季節の行方

自分らしく生きることは難しい。親が存命している間はできるだけ失望させたくないのは自分の性だし、就活のシビアさを体現してくれない狂言にも付き合わなくてはならない。いよいよ親の忠告により淡く幸せな大学生活から目覚めると周りはとっくに次へと動き…

世に生きとし生けるものならば

金が好きである。通帳に刻む数字を見るのが好きだ。金の流れを考えるのが好きだ。金で人と人の間を繋げるのが好きだ。金があれば形があるものも形がないものも大方手に入る。金は信用なり。 夏目も好きである。一日中畳の部屋に寝転がり三四郎が門を出るまで…

夏という季節

夏は非日常的だ。 昔から夏は特別だった。暑苦しいのは好きじゃなかったけど、夏が来ると夏休みと誕生日が近い。プール開きに夏期講習、夏祭り、花火、夏の甲子園。青春の代名詞であり全てのハレと娯楽の集い場所で、嫌いな学校から遠ざかれるし、好きな事を…

1年ぶりの更新

2018年も半ば。 実家で安室奈美恵の神々しさに酔倒されてより6か月 同窓会で悔いだけを残して同窓会から振袖を払い5か月 湯沢の雪の映えるまま温泉に浸りて4か月 京都の月と桜に心の騒がしさ隠しきれずに3か月 卯月の風に憂いを乗せたま新学期を受け入れ…

遊び人だけど楽しければいいよね

また、誘いに乗ってしまった。 コミュ障、アスペ、年齢=彼氏いない歴のチェリー。また違う男と遊びに行く。 今までご飯や映画に行った男の数だけは数えられるけど、肝心の彼氏の作り方をまだ知らない。いいなと思うことがあっても自分からは告らないし何よ…

好きなことより自分にしかできないことを

椎はご存知でしょうか。 夏目漱石『三四郎』にも出てくる常緑樹で、葉の裏が金色で風が吹くとよく分かる木です。 そのシイ属の木で、スダジイという種があります。 スダジイは元は陰樹であり、日陰が好きなので林の中ではできる限り陰になっている所にいます…

六畳半笑話体型~聖なる怠け者の帰還~

ほぼ二か月ぶりに更新します。新学期の始まりでドタバタしてたのは逃げ口上で、本当はほとんど読み物をしてないがために書く意欲も失せていました。遅れたが今学期の抱負と部活動について書きたい。 今年度から新しく始めたことと言えば、ラテン語の勉強であ…

香港澳門旅行記

大学に入ってから初めての海外旅行のような気がします。 行ったのは二月末で日本より暖かいと予想したが、前半の香港は普通に寒く(11℃)コートがほしいくらいでした。 香港はいくつかの島に分かれていて、夜景がきれいなヴィクトリアピークから人影が途絶…

国語の教科書に載っていた話をひたすら思い出す

このテーマは長くなりそうだから、何回に分けて書くことを検討している。 この記事を書こうと思ったのは大学生協の本棚でヘルマンヘッセ作『少年の日の思い出』を目にかけ、懐かしさのあまり即買いした日がきっかけである。 思えば中学、高校の国語の教科書…

色即是空-『行人』夏目漱石

読んだのは新潮文庫のもの。後期三部作の二作目であるが『彼岸過迄』は読んでいない(高校時手に取ったが読めていない)。 行人 (新潮文庫) 作者: 夏目漱石 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1952/03/24 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 69回 この商品を…

そら模様

空と言えば何を思い浮かべますか。 これは『から』でも『くう』でもなくて、『そら』の方についての話です。 日本語では『空目』『空耳』、夏目漱石《琴のそら音》(とても面白い話だが今回は割愛くぁwせdrftgyふじこlp)などは幻聴や幻覚の意味を帯びていま…